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制度・在宅

訪問リハビリは効いているのか|海外27試験と国内40人のデータで読むBADLとIADLの違い

「訪問リハビリって、実際どのくらい効果があるんですか」。

ケアマネジャーからも、家族からも、たまに聞かれます。答えに詰まるのは、自分たちの仕事そのもののエビデンスを数字で言える人が意外と少ないからです。しかも訪問リハの研究は疾患ごとにバラバラで、全体像がつかみにくい。

そこで今回は2本の研究を並べて読みます。1本では足りないからです。

  • ①海外の27試験・4,948人のメタ分析は、証拠としては強いものの、対象が地域在住の高齢者全般で日本の介護保険下の訪問リハとは制度が違う
  • ②日本の脳卒中利用者40人の実データは、対照群がなく証拠としては弱いものの、私たちが実際に担当している人たちそのもの

互いの穴を埋める形で読むと、「効いている/効いていない」より先に考えるべきことが見えてきます。

結論

訪問リハビリは効くか効かないかではなく、「その人のどこに伸びしろがあるか」で動く指標が変わる、と読むのが正確です。

  • ①海外27試験:運動中心の介入でBADLがSMD 0.43(95%CI 0.21〜0.66)、身体機能がSMD 0.20(0.10〜0.30)改善。ただし確実性は「低い」
  • ①活動中心の介入はBADLは改善するがIADLは改善しなかった(SMD −0.15、95%CI −0.31〜0.01)
  • ②日本の脳卒中利用者40人:4か月でFIM(BADL)合計は変化なしFAI(IADL)合計は11.1→12.8点に改善(p<0.01)
  • 2本で結果が逆になったのは、対象者のADLの位置が違うから。②はFIM平均97.3/126点=すでに天井近くだった

なぜBADLとIADLを区別するのか

先に用語を整理します。

  • BADL(基本的ADL):食事・移乗・排泄・整容など、生きるために毎日必ず行う動作。FIMやBarthel Indexで測る
  • IADL(手段的ADL):食事の用意・買い物・掃除・外出・趣味など、生活を組み立てる活動。FAIなどで測る

訪問リハの効果判定ではFIMだけを見がちですが、この記事の2本はどちらも「それだけでは足りない」と示しています。

①海外27試験・4,948人:3つのアプローチで効果が違う

2026年に発表された、カロリンスカ研究所らによるシステマティックレビュー/メタ分析です。

  • 対象:地域在住の65歳以上で、身体機能が低下しているかADLに困難がある人。参加者の平均年齢は試験によって74〜87歳
  • 方法:監督下で行う訪問リハビリのRCTを27件統合(4,948人)。MEDLINE・Web of Science・CINAHLを2006年1月〜2025年9月で検索
  • 特徴疾患を限定していない(脳卒中だけ、骨折だけ、といった研究は除外)。施設で行うリハビリも除外
  • :27件中23件がバイアスリスク低、3件が中、1件が高

著者らは介入を3つのアプローチに分類しました。

アプローチ 試験数 中身
活動中心(Activity-based) 11 ADLの評価、本人の生活目標設定、動機づけ面接、動作の簡略化・優先順位づけ・環境適応、福祉用具と住環境調整
運動中心(Exercise-based) 13 個別に負荷を上げる運動プログラム(バランス・筋力・機能的運動・ストレッチ・移乗訓練・歩行)、週1回未満〜1日3回まで、記録ノート
リエイブルメント中心(Reablement-based) 3 セラピストがヘルパーを指導し、本人が自分でADLを行うのを促す多職種型

結果です。

アプローチ アウトカム 効果量 95%信頼区間 人数 確実性
運動中心 BADL SMD 0.43 0.21〜0.66 310 低い
運動中心 身体機能 SMD 0.20 0.10〜0.30 1,472 低い
活動中心 BADL SMD 0.29 0.17〜0.41 1,048 中程度
活動中心 IADL SMD −0.15 −0.31〜0.01 603
リエイブルメント 身体機能 SMD 0.12 −0.05〜0.28 555 低い〜非常に低い
リエイブルメント COPM遂行度 MD 0.30 −0.25〜0.86 291 低い〜非常に低い

確実性が「中程度」だったのは活動中心のBADLだけです。効果量はSMD 0.29で、統計学的には「小さい」に分類される大きさです。

そして注目すべきは、活動中心の介入でIADLが改善しなかったこと(SMD −0.15、信頼区間が0をまたぐ)。BADLは動いたのに、IADLは動かなかったのです。

②日本の脳卒中利用者40人:FIMは動かず、FAIが動いた

こちらは大阪の医療法人が、継続的に訪問リハビリを利用している脳卒中患者40人(男性19人・女性21人)を後ろ向きに調べた研究です。

  • 対象:平均年齢68.8±13.5歳、訪問リハ開始からの平均日数374.8日、独居11人(27.5%)
  • 方法:2023年4月と8月の4か月間、BADLをFIM、IADLをFAIで評価して変化を比較。全体と男女別に解析
  • デザイン後ろ向き観察研究。対照群はありません
指標 4月 8月 判定
FIM合計(18〜126点) 97.3 ± 21.1 97.5 ± 21.1 変化なし
FIM 移動(2〜14点) 8.6 ± 3.0 9.0 ± 3.0 p<0.01
FAI合計(0〜45点) 11.1 ± 8.9 12.8 ± 9.1 p<0.01
FAI 屋内家事(0〜15点) 4.4 ± 5.1 4.9 ± 5.4 p<0.05
FAI 戸外活動(0〜12点) 4.5 ± 2.9 5.5 ± 3.3 p<0.01

FIM合計はほぼ完全に横ばい(97.3→97.5)。一方FAI合計は1.7点改善しています。

さらに男女別に見ると差がはっきりします。

指標 男性(19人) 女性(21人)
FAI合計 4月→8月 8.0 → 8.5(変化なし) 13.9 → 16.6(p<0.01)
FAI 屋内家事 2.4 → 2.4(変化なし) 6.3 → 7.2(p<0.05)
FAI 戸外活動 3.4 → 4.0(変化なし) 5.5 → 6.8(p<0.01)

改善していたのは女性だけでした。ただし男性はもともとFAIが8.0点と低く、特に屋内家事が2.4/15点。著者らは、FAIの項目が食事の用意・洗濯・掃除といった屋内家事に偏っており、その生活習慣に性差があることを理由として挙げています。

2本を並べて見えること

ここが一番の読みどころです。2本の結果は、一見すると逆を向いています。

BADL IADL
①海外(活動中心) 改善した(SMD 0.29) 改善しなかった(SMD −0.15)
②日本(脳卒中・訪問リハ) 変化しなかった(FIM 97.3→97.5) 改善した(FAI 11.1→12.8)

矛盾ではありません。対象者のADLの位置が違うからです。

  • ①の対象はBADLに困難がある地域在住高齢者(74〜87歳)。つまりBADLに伸びしろがある人たち
  • ②の対象はFIM平均97.3/126点。すでに身の回りのことはおおむね自立していて、BADLに伸びしろがほとんどない人たち

②の著者らも、FIMには天井効果(開始時点でスコアが高い利用者ではFIM利得が小さくなる)があることを議論の中心に置いています。

訪問リハが効かなかったのではなく、FIMでは測れないところが動いていた。これが2本を並べて読んで初めて言えることです。

訪問リハ・在宅の現場でどう使うか

1. 「FIMが変わらない=効果なし」と報告しない

在宅の利用者は開始時点でFIMが高いことが珍しくありません。②のようにFIM平均97点の集団では、4か月でFIMが動かないほうが自然です。効果がないのではなく、指標が飽和しているだけかもしれません。

2. IADLの評価を併用する

②が示したのは「FAIを併用すると変化が拾える」ということでした。FAIは食事の用意・洗濯・買い物・外出・趣味など15項目で、点数の幅も0〜45点と広く取れます。担当者会議やケアマネへの報告で、FIM以外に見せられる数字を持っておく価値があります。

3. 運動と活動の両方を組み込む根拠にする

①では運動中心でBADLと身体機能が、活動中心でBADLが改善しました。どちらか一方ではなく、運動プログラムと「その人の生活目標に沿った動作練習」を組み合わせることが、少なくとも証拠の方向とは矛盾しません。

4. 男性利用者のIADLの捉え方を変える

②で男性のFAIが動かなかったのは、屋内家事の項目が生活習慣と合っていなかった可能性があります。FAIが低いこと自体が問題なのではなく、その人が何を再開したいのかを先に聞く。①の活動中心アプローチが「本人の生活目標を設定する」から始めているのと同じ発想です。

5. 効果量の大きさは誇張しない

①でもっとも確実性が高かった活動中心のBADLでSMD 0.29。これは統計学的には「小さい」効果です。「訪問リハで劇的に良くなる」とは言えません。小さいけれど確かにある、が正確な伝え方です。

この研究の限界

①について

  • 確実性が「中程度」だったのは活動中心のBADLだけです。運動中心は不精確さとバイアスリスクで「低い」、リエイブルメント中心は「低い〜非常に低い」に格下げされています
  • リエイブルメント中心はわずか3試験で、ADL・身体機能のいずれも有意な効果は示されていません。**「効果がない」ではなく「まだ判断できる材料がない」**という意味です
  • 27試験中26試験が欧米で実施されています。介護保険という制度も、住環境も、家族の関わり方も日本とは違います
  • 疾患を限定していないため、脳卒中やパーキンソン病など特定の疾患に対する訪問リハの効果を示したものではありません
  • 有害事象を報告した試験では、足首の重錘による痛み・48時間以上の活動制限を伴う痛み・調理動作練習中の切り傷が報告されています。在宅での練習にリスクがないわけではありません

②について

  • 後ろ向き観察研究で、対照群がありません。 訪問リハを受けなかった場合にどうなったかは分からず、訪問リハの効果と断定することはできません。自然経過や季節(4月→8月)の影響も否定できません
  • 40人のみ、しかも1つの法人の利用者です。一般化には慎重さが要ります
  • 4か月という短期間の比較です
  • 効果量・信頼区間は報告されておらず、示されているのは平均値の変化とp値のみです。改善の大きさがどれほど確からしいかは、この論文からは読み取れません
  • 男女別の解析は、男女差を直接検定したものではありません(各群内で4月と8月を比較した結果です)。「女性のほうが効果が大きい」と読むのは踏み込みすぎです

2本に共通すること

  • 証拠の強さがまったく違います。 ①は27件のRCTを統合したメタ分析、②は対照群のない40人の観察研究です。同じ重みで扱ってはいけません
  • 対象が違います。 ①は疾患を問わない地域在住高齢者、②は脳卒中後の在宅生活者。直接比較できるデータではなく、互いを補って読むためのものです

まとめ

  • 訪問リハビリは、運動中心でBADL(SMD 0.43)と身体機能(SMD 0.20)、活動中心でBADL(SMD 0.29)が改善する。ただし効果量は小さく、確実性も中程度以下
  • 活動中心の介入ではIADLが改善しなかった(①)。一方、日本の脳卒中利用者ではFIMが動かずFAIが改善した(②)
  • 逆に見えるのは、対象者のADLの位置が違うから。②はFIM平均97.3点で天井効果があった
  • 現場では、「FIMが変わらない=効果なし」と結論せず、IADLの評価を併用する。ただし②は対照群のない40人の観察研究であり、訪問リハの効果と断定はできない

出典

Högstedt K, Grooten WJA, Flink M, Baudin K, Guidetti S, Rydwik E. The components and effects of home rehabilitation on activities of daily living and physical performance of community dwelling older people with low physical performance - a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Geriatrics. 2026;26(1):889. DOI: 10.1186/s12877-026-07887-9 PMID: 42380867

太箸俊宏, 瑞慶覧誠, 平岩敏志, 田中恭子, 後藤正樹, 梅田勝, 西尾俊嗣. 脳卒中患者の訪問リハビリテーション利用効果の基本的日常生活動作および手段的日常生活動作を用いた男女別解析:後ろ向き観察研究. 理学療法科学. 2025;40(5):196-200. DOI: 10.1589/rika.40.196 J-STAGEで全文を読む

※本記事は上記2本の論文を運営者が読み、自身の言葉で要約したものです。原著の抄録・本文の転載および全訳は行っていません。評価・介入の実施にあたっては、必ず主治医・担当の医療専門職の指示に従ってください。

在宅での運動については、心不全に運動は効くのかでも「施設か在宅かで効果に差は見られなかった」というCochraneレビューの結果を取り上げています。

タグ:訪問リハビリ / ADL / IADL / 脳卒中 / 評価

この記事について

本記事は公開されている論文をもとに、あいす理学療法士(10年目)が要約・解説したものです。原著の内容を完全に再現するものではないため、 臨床判断の際は必ず原著をご確認ください。

また、本記事は特定の個人に対する診断・治療の助言ではありません。 症状についてのご相談は主治医・かかりつけの専門職へお願いします。