座位時間は寿命に関わるのか|加速度計で測った36,383人の用量反応メタ分析

訪問リハビリで関われるのは、1回40分ほどです。残りの23時間以上を、その人はどう過ごしているのか。
「もっと運動しましょう」と伝えてきましたが、そもそも運動の強さを上げることと、座り続けないことは、同じ重さの話なのか。加速度計で実際に測ったデータを集めた解析があります。
結論
動いている時間の「総量」が予後と関連していて、強さは問われていない。
- 軽い活動がもっとも多い群の死亡リスクは、もっとも少ない群の0.38倍(95%信頼区間 0.28〜0.51)
- 座位時間がもっとも長い群は、もっとも短い群の2.63倍(1.94〜3.56)。上昇が目立つのは1日9.5時間を超えてから
- もっとも差が大きいのは「まったく動いていない人が少し動く」ところ(総活動量の第2四分位で0.48倍)
- ただしこれは前向きコホートのメタ分析であり、因果関係を示したものではありません
この研究がやったこと
Ekelundらが2019年にBMJで報告した、システマティックレビューとデータを統合したメタ分析です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研究デザイン | 前向きコホート研究8件の統合解析 |
| 対象 | 36,383人(40歳以上・平均62.6歳) |
| 測定方法 | 加速度計による実測(質問紙ではない) |
| 追跡期間 | 中央値5.8年(3.0〜14.5年) |
| 死亡 | 2,149人(5.9%) |
| 研究の質 | Newcastle-Ottawaスケールで8〜9点/9点 |
質問紙ではなく機器で測っている点が、この解析のいちばんの強みです。座っていた時間や活動量の自己申告は、実際とずれることが知られています。
比較は4つの群(四分位)に分けて行われ、もっとも少ない群を基準にした死亡リスクの比(ハザード比)で示されています。
結果:強度より「総量」、そして座りすぎの方向がはっきりしている
| 指標 | 第2四分位 | 第3四分位 | 第4四分位 |
|---|---|---|---|
| 総身体活動量 | 0.48(0.43〜0.54) | 0.34(0.26〜0.45) | 0.27(0.23〜0.32) |
| 軽強度の活動 | 0.60(0.54〜0.68) | 0.44(0.38〜0.51) | 0.38(0.28〜0.51) |
| 中〜高強度の活動 | 0.64(0.55〜0.74) | 0.55(0.40〜0.74) | 0.52(0.43〜0.61) |
| 座位時間 | 1.28(1.09〜1.51) | 1.71(1.36〜2.15) | 2.63(1.94〜3.56) |
いずれも、もっとも少ない群(座位時間は「もっとも短い群」)を1.00としたハザード比です。括弧内は95%信頼区間で、全体が1.00をまたいでいなければ、関連の向きははっきりしていると読みます。
ただしこれは倍率であって、人数の割合ではありません。この集団で亡くなったのは5.8年間で36,383人中2,149人(5.9%)です。もとの割合がこの程度なので、2.63倍でも「座っている人の多くが亡くなる」という話にはなりません。
読み方が3つあります
1. 一番大きな差は、最初の一段で出ている。 総活動量では、第2四分位に上がるだけで0.48です。関連は直線ではなく、もっとも動いていない人が少し動く範囲で差が大きい形でした。
2. 軽い活動でも0.38。 中〜高強度の0.52よりも小さい数字です。ただしこれは別々のモデルで出た値で、「軽い活動のほうが優れている」と直接比べた結果ではありません。言えるのは、強度を上げなくても、総量として予後と関連していたということです。
3. 座位時間は9.5時間から。 リスクは1日7.5〜9時間あたりから緩やかに上がり、9.5時間を超えると上昇が目立つと報告されています。12時間座っている状態は、はっきりリスクが高い側です。
なお、もっとも大きなリスク低下が観察された量は、軽強度で1日約375分・中〜高強度で1日約24分でした。これは集団として最大の低下が見られた点であって、個人への処方量ではありません。
死亡というアウトカムには、6分間歩行のMCID(臨床的に意味のある差)のような「これ以上なら意味がある」という基準がありません。数字の大小ではなく、方向と用量反応の形で読む指標です。
現場でどう使うか
1. 「座っている時間」を聞き取り項目に入れる(目安は1日9.5時間)◎
起床から就寝までの過ごし方を、時間で聞き取ります。テレビの前・食卓・ベッド上をそれぞれ足すと、9.5時間は簡単に超えます。超えているなら、そこが介入の余地です。
根拠はこの解析の座位時間の結果です(第4四分位で2.63倍、9.5時間超で上昇が目立つ)。加速度計がなくても、聞き取りで「超えていそうか」の当たりはつけられます。
2. 訪問中に運動を足すより、訪問していない時間の「軽い活動」を増やす設計にする ◎
軽強度の活動がもっとも多い群で0.38です。強度を上げる必要はありません。洗濯物を運ぶ、配膳する、ゴミを出す、家の中を歩いて用事を済ませる。すでに生活にある動作を、回数を増やす形で積み上げます。
もっとも差が大きいのは最初の一段でした。まったく動いていない人に少し動いてもらうことが、いちばん割のいい関わりだと読めます。
3. 「30分ごとに立つ」という分割のしかたは、この研究では確かめられていない △
この解析が扱ったのは1日の合計量です。こまめに立つ、1時間ごとに区切るといった分け方の効果は検証されていません。現場で使うのは構いませんが、「30分ごとに立つと寿命が延びる」という言い方は、この論文を根拠にできません。
この研究の限界(ここを外すと誤読します)
- 観察研究です。因果関係は示されていません。「座る時間を削れば寿命が延びる」と読み替えられません。逆の因果(すでに弱っている人が座っている)も考えられます。ただし著者らは追跡開始2年以内の死亡を除いた解析も行い、総活動量の結果はほぼ変わらず、座位時間はわずかに弱まったと報告しています。座位時間のほうが逆の因果の影響を受けやすい、と読むのが妥当です。
- 対象は米国と西欧、平均62.6歳。日本の、要介護認定を受けた在宅の高齢者ではありません。訪問リハの利用者にそのまま当てはめられる集団ではありません。
- 強度のしきい値は若年成人の歩行から作られたもので、単軸の加速度計データのみを使っています。高齢者が家の中で行う動作は、実際より軽く評価されている可能性があります。
- 測定は1回だけで、その後の活動量の変化は追っていません。
- 示されているのは集団としての関連で、個人への運動処方の量として使える数字ではありません。
- アウトカムは総死亡です。ADLやQOL、転倒がどうなるかは、この解析からは分かりません。
次の訪問で変えること
起床から就寝までの過ごし方を時間で聞き取り、座っている合計が1日9.5時間を超えていないかを確認する。超えていたら、新しい運動を足すのではなく、いまある生活動作(洗濯・配膳・ゴミ出し)を分けて回数を増やし、座っている時間を削る。
根拠:座位時間がもっとも長い群は、もっとも短い群の2.63倍(1.94〜3.56)◎/上昇が目立つのは9.5時間超◎/軽い活動がもっとも多い群は0.38倍(0.28〜0.51)◎/分割のしかた自体は未検証 △
まとめ
- 加速度計で測った8コホート36,383人の解析で、総活動量が多いほど・座位時間が短いほど死亡リスクが低いという関連が示された
- 強度は問われていない。軽強度でもっとも多い群は0.38倍(0.28〜0.51)
- 座位時間は1日9.5時間を超えると上昇が目立つ。もっとも長い群は2.63倍(1.94〜3.56)
- 差がもっとも大きいのは「まったく動いていない人が少し動く」一段目
- ただし観察研究であり、因果ではない。個人への処方量としても使えない
同じ「簡単に測れて予後を映す指標」としては歩行速度と握力があります。在宅で使う評価項目を目的別に並べた一覧は理学療法の評価項目一覧にまとめました。入院という「動かない時間」が生活機能に何をするかは入院しただけで生活機能は落ちるのかで扱っています。
出典
Ekelund U, Tarp J, Steene-Johannessen J, Hansen BH, Jefferis B, Fagerland MW, Whincup P, Diaz KM, Hooker SP, Chernofsky A, Larson MG, Spartano N, Vasan RS, Dohrn IM, Hagströmer M, Edwardson C, Yates T, Shiroma E, Anderssen SA, Lee IM. Dose-response associations between accelerometry measured physical activity and sedentary time and all cause mortality: systematic review and harmonised meta-analysis. The BMJ. 2019;366:l4570. DOI: 10.1136/bmj.l4570 PMID: 31434697
※本記事は上記論文を運営者が読み、自身の言葉で要約したものです。原著の抄録・本文の転載および全訳は行っていません。診断・治療の判断は主治医・担当の専門職にご相談ください。
この記事について
本記事は公開されている論文をもとに、あいす・理学療法士(10年目)が要約・解説したものです。原著の内容を完全に再現するものではないため、 臨床判断の際は必ず原著をご確認ください。
また、本記事は特定の個人に対する診断・治療の助言ではありません。 症状についてのご相談は主治医・かかりつけの専門職へお願いします。