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評価・測定最終更新 2026-09-14

SPPBは何を予測できるのか|16,534人のメタ分析が示す「10点未満」の意味

SPPBは何を予測できるのか|16,534人のメタ分析が示す「10点未満」の意味

在宅で使える評価は限られています。そのなかでSPPBは、特別な機器がなくても5分ほどで終わります。

ただ、点数が出たあとに困ります。何点なら気にするべきで、何点動いたら「良くなった」と言えるのか。その2つに答えられる数字があります。

結論

SPPBは「10点未満かどうか」で予後が分かれる。

  • 10〜12点を基準にすると、7〜9点で死亡のオッズ比1.50(95%信頼区間 1.32〜1.71)
  • 4〜6点で2.14(1.92〜2.39)、0〜3点で3.25(2.86〜3.79。ここだけ15研究)
  • 17研究・16,534人(平均76±3歳・女性78%)の統合。追跡は1〜11年(中央値4.5年)
  • オッズ比であって「リスク◯倍」ではありません。追跡中に亡くなったのは19.5%(3,237人)で、まれな出来事ではないためです
  • ただし観察研究のメタ分析であり、因果関係を示したものではありません

この研究がやったこと

Pavasiniらが2016年にBMC Medicineで報告した、システマティックレビューとメタ分析です。

項目 内容
研究デザイン 観察研究17件の統合解析(0〜3点の比較のみ15件)
対象 16,534人(平均76±3歳・女性78%)。11件は一般集団、外来3件・入院3件
追跡期間 1〜11年(中央値4.5年)
指標 SPPBの得点を4段階(0〜3/4〜6/7〜9/10〜12)に分けて比較
アウトカム 総死亡(追跡中に3,237人・19.5%が死亡)
調整 年齢・性別・BMI
質評価 Newcastle-Ottawaスケール(GRADEによる確実性の評価は行われていない)

SPPBは立位バランス・歩行速度・椅子立ち上がりの3項目を各0〜4点で採点し、合計0〜12点で表す検査です。道具は椅子とストップウォッチ、数メートルの直線だけで済みます。

結果:点数が低いグループほど、亡くなりやすかった

SPPBの得点 死亡のオッズ比 95%信頼区間
10〜12点 1.00(基準) —
7〜9点 1.50 1.32〜1.71
4〜6点 2.14 1.92〜2.39
0〜3点 3.25 2.86〜3.79

数字を読むときの3つの注意

1. 満点に近くなくても、9点以下で差がついている。 7〜9点は「だいたい動ける人」に見えますが、それでもオッズ比は1.50です。下限の1.32でも1を超えているので、関連の向きははっきりしています。

2. 全体としては研究間でそろっている。ただし7〜9点は場面によってばらつく。 0〜3点と4〜6点の比較では異質性はごくわずか、7〜9点でも全体では低い水準でした。ただし外来(I²=80%)や北米(73%)のサブグループでは、7〜9点の異質性が高く出ています。「どこで測るか」で結果が動く余地が残っている、ということです。

3. 7〜9点だけ、集団によってオッズ比が動く。 メタ回帰では、7〜9点のオッズ比は平均年齢が若い集団・糖尿病のある集団・男性で高いという結果でした。0〜3点と4〜6点では、こうした差は出ていません。

ただし年齢の交互作用は統計学的に有意ではなく(75歳以下1.65/75歳超1.38、p=0.24)、これは研究単位の解析です。「70代の個人は80代の個人より重い」と読み替えることはできません。

なお、この解析が統合しているのはオッズ比(OR)です。各研究からオッズ比とハザード比の両方を集めたうえで、オッズ比を主な指標として統合しています。

オッズ比は「起こりやすさの比」です。1より大きいほど起こりやすい、という向きと順番を読む数字で、「割合が◯倍」という意味ではありません。アウトカムがまれなときはリスク比に近づきますが、この集団では19.5%が亡くなっており、まれとは言えません。オッズ比3.25は、リスク比に直すともっと小さい値になります。順位や方向を読む数字として扱うのが安全です。

採点のしかた:3つの検査で12点

ぺんた

SPPBって、なんとなく「立って、歩いて、立ち上がる」は知ってるんですけど、何秒で何点かは毎回調べてます……。

あいす

みんなそうだと思う。表にしておくね。あと、歩く距離を変えると秒数の表が使えなくなるから、そこだけは気をつけて。

3つの検査をそれぞれ0〜4点で採点し、合計0〜12点にします。いま広く使われている4m版の採点基準は次のとおりです。

バランス(0〜4点)

立ち方 10秒保てたら 保てなかったら
① 両足をそろえて立つ +1点 → ②へ +0点で終了
② 足を半分ずらして前後に置く(セミタンデム) +1点 → ③へ +0点で終了
③ 足を前後一直線に置く(タンデム) +2点 3秒以上10秒未満なら+1点、3秒未満なら+0点

①から順に足し算で進み、保てなかった時点で終わりです。それまでに取った点は残ります(①だけ保てたら1点)。

歩行(0〜4点):4mを、いつもの速さで

4mにかかった時間 点 歩行速度にすると
4.82秒未満 4点 約0.83m/秒より速い
4.82〜6.20秒 3点 約0.65〜0.83m/秒
6.21〜8.70秒 2点 約0.46〜0.64m/秒
8.70秒を超える 1点 約0.46m/秒より遅い
歩けない 0点 —

線の上に立った状態から、いつもの速さで歩いてもらいます。2回測って速いほうを採ります。この表を引用した研究では、必要なら杖や歩行器の使用を認めていました。

椅子立ち上がり(0〜4点):腕を胸の前で組んで5回

まず1回だけ、腕を組んだまま立ち上がれるか試します。立てなければ0点で終了です。

5回にかかった時間 点
11.19秒以下 4点
11.20〜13.69秒 3点
13.70〜16.69秒 2点
16.70〜60秒 1点
できない/60秒を超える 0点

歩く距離を変えたら、この表は使えない

実は、1994年に発表された最初のSPPBは、歩行を2.44m(8フィート)で測っていました。秒数の区切りも別物です。

その後、2000年の論文で8フィートの結果が歩行速度(m/秒)の区切りに直され(0.83以上/0.65〜0.82/0.47〜0.64/0.46未満)、それを4mに当てはめたのが上の表です。このあと紹介する日本のSONIC研究は、最初の方法どおり2.44mを助走なしで測っています。

上の秒数の表は4mのためのものです。距離を変えたら、そのまま当てはめることはできません。

虚弱な方では、歩行が1点に張りつきやすい

ナーシングホームに入所している、持病の多い高齢者(平均84歳前後)の研究では、4mを歩き切れた593人のうち36%が歩行1点でした。952人のうち359人は、そもそも歩けないか検査を断っていて、この数字に入っていません。研究ごとに見ると、1点の割合は22〜46%と幅があります。

著者らは、今の区切りでは低い人どうしの差が見えにくいとして、区切りを変えた採点案(4点は5.65秒未満、1点は10.80秒超)を出しています。

訪問リハの利用者にも、この「1点に張りつく」方は少なくないと思います。合計点が変わらなくても、4mの秒数そのものは記録しておくと、変化を拾える可能性があります △(秒数の記録で変化を拾えるかは、はっきり検証されてはいません)。

日本の高齢者は、何点くらいなのか

日本には、地域在住の70歳・80歳・90歳をそれぞれ集めて、会場で測ったSONIC研究があります。90歳の数字は、要介護認定を受けている人を除いたものです(70歳・80歳でも除いているかは、論文の中で記述が食い違っていて確認できませんでした)。

年齢 男性の平均(人数) 女性の平均(人数)
70歳 10.8点(±1.4・471人) 10.9点(±1.3・516人)
80歳 10.6点(±1.6・443人) 10.1点(±1.9・497人)
90歳 8.3点(±2.2・336人) 7.5点(±2.4・333人)

±は標準偏差です。70歳から80歳ではあまり下がらず、80歳から90歳で大きく下がっています。ただしこれは、同じ人を追いかけた結果ではなく、別々の集団を並べた比較です。

90歳の参加者全体では、5回立ち上がりができなかった人が約2割いました。

90歳では「10点未満」が平均的

ここが、前の章と合わせて読みたいところです。

メタ分析の対象は平均76歳で、「10点未満かどうか」で予後が分かれていました。ところが90歳では、要介護認定のない人の平均がすでに10点を下回っています。

90歳のデータでは、同じ年齢・性別の中で下から5分の1に入るのは、男性6点以下・女性5点以下でした。真ん中の5分の1は、男性8点・女性7点です。

90歳の方の「9点」は、同年代の中では良いほうです。同じ9点でも、76歳と90歳では意味が違います。

現場でどう使うか

1. 初回評価に入れて、「10点未満かどうか」だけを記録する ◎

3項目で5分ほどです。満点との差を細かく見るより、10点未満かどうかで線を引きます。7〜9点で1.50、4〜6点で2.14というオッズ比の並びは、そこから先が段階的に開いていくことを示しています。

カルテには「SPPB◯点(10点未満)」と書いておくと、次に測ったときの比較が早くなります。あわせて「歩行4m・◯秒」と秒数も残しておくと、合計点が動かない時期の変化も追えます。

ただし90歳前後の方では、10点未満が平均的です。この年代では「10点未満かどうか」より、同年代の下から5分の1(男性6点以下・女性5点以下)に入るかどうかのほうが、意味のある線になります △(90歳での予後との関係は、このメタ分析では確かめられていません)。

2. 変化を追うときは「1点」を目安にする ◎

別の研究(Perera 2006)で、SPPBの小さな意味のある変化は約0.5点、大きな変化は約1.0点と見積もられています。ただし同じ研究は、0.5点の変化は臨床の場面では検出できないとも述べています。

この研究の対象は、運動器の障害がある高齢者・亜急性期の脳卒中の方・地域在住高齢者の3群です(3分の1が脳卒中後)。訪問リハの利用者にそのまま重なる集団ではありません。

つまり現場で頼れるのは1点動いたかどうかです。「0.5点上がりました」は誤差の範囲に入ります。3か月おきに測って、1点の増減で判断するのが現実的な使い方になります。

3. 点数が低い人に何をするかは、この研究の外にある △

この解析が示したのは「予測」であって「処方」ではありません。SPPBが低い人に何をすれば数字が戻るのか、この研究は検証していません。

運動介入そのものの根拠はフレイルに運動介入は効くのかにまとめています。評価で見つけたあと、何をするかは別の根拠で決めます。

この研究の限界(ここを外すと誤読します)

  • 観察研究のメタ分析です。因果関係は示されていません。「SPPBを上げれば死亡リスクが下がる」とは読めません。
  • オッズ比での報告であり、ハザード比ではありません。追跡期間の異なる研究をまとめているため、時間あたりのリスクとしては扱えません。
  • 得点を4段階に区切って解析しています。連続値としての情報(1点刻みの差)は、この解析からは出てきません。
  • 平均76歳・地域在住の高齢者が中心です。要介護度の高い在宅利用者にそのまま当てはまるとは限りません。
  • 著者ら自身が、SPPBを既存の予測モデルに足したときに精度が上がるかは検証していないと述べています。「単独で予後を映す指標」であって、他の情報を置き換えるものではありません。
  • 一部のデータは研究著者への問い合わせで得られており、回答が得られた研究だけが解析に入っている点も、著者らが限界として挙げています。出版バイアスを完全には除外できないとも書かれています。
  • 死亡の定義(エンドポイント)が研究ごとに異なることも、著者らが限界に挙げています。
  • 一般集団だけでなく、外来3件・入院3件が含まれています。入院集団に限ると4〜6点(1.94、0.85〜4.41)も7〜9点(1.23、0.53〜2.85)も信頼区間が1をまたぎます。セッティングによっては関連がはっきりしません。
  • 参加者の78%が女性です。メタ回帰で「男性でオッズ比が高い」と出ている一方、元の集団は女性に偏っています。
  • 日本の平均点(SONIC研究)は、会場まで来て測定を受けられた人のデータです(90歳は要介護認定者を除外)。訪問リハの利用者より元気な側に偏っています。また歩行は2.44m・助走なし、椅子は40cmで測っています
  • SONIC研究の70歳・80歳・90歳は、調べた年も参加条件も違う別々の集団です。「80歳から90歳で大きく下がる」は、同じ人の変化を追ったものではありません
  • 90歳の「下から5分の1」は、このメタ分析とは別の研究の分布です。その線で予後が分かれるかは検証されていません
  • MCIDの出典(Perera 2006)は全文が無料公開されていません。このブログは全文が読める論文だけを使う方針ですが、この記事では抄録で確認できる数値(0.5点・1.0点)だけを引用しています。

次の訪問で変えること

初回評価にSPPBを足して、「10点未満かどうか」と「4m歩行の秒数」を記録に残す。90歳前後の方は、男性6点以下・女性5点以下かどうかも見る。次に測るのは3か月後。1点動いたかどうかで良し悪しを判断する。

根拠:10〜12点に対し7〜9点のオッズ比1.50(1.32〜1.71)・4〜6点2.14・0〜3点3.25 ◎(オッズ比であり「◯倍」ではない)/大きな変化は約1.0点、0.5点は検出できない(Perera 2006)◎/90歳では要介護認定のない人の平均が男8.3点・女7.5点(SONIC研究)◎/90歳の下位20%の線で予後が分かれるかは未検証 △/低得点の人に何をすべきかは、この研究の範囲外 △

まとめ

  • SPPBはバランス・歩行・椅子立ち上がりの3項目・0〜12点で、5分ほどで測れる
  • 10〜12点を基準に、7〜9点で1.50・4〜6点で2.14・0〜3点で3.25(総死亡のオッズ比。「◯倍」ではない)
  • 変化を追うなら1点が目安。0.5点は現場では判断材料にしない
  • 採点の秒数表は4m歩行用(最初のSPPBは2.44m)。距離を変えたら使えない。虚弱な方は歩行が1点に張りつきやすいので、秒数も記録しておく
  • 日本の平均は70歳・80歳で約10〜11点、90歳で男8.3点・女7.5点。90歳では10点未満が平均的
  • ただし観察研究であり、因果でも処方でもない

同じ「測るだけで予後を映す」指標として歩行速度・握力・座位時間も扱っています。在宅で使う評価項目を目的別に並べた一覧は理学療法の評価項目一覧にまとめました。


出典

Pavasini R, Guralnik J, Brown JC, di Bari M, Cesari M, Landi F, Vaes B, Legrand D, Verghese J, Wang C, Stenholm S, Ferrucci L, Lai JC, Bartes AA, Espaulella J, Ferrer M, Lim JY, Ensrud KE, Cawthon P, Turusheva A, Rolland Y, Lauwers V, Corsonello A, Kirk GD, Ferrari R, Volpato S, Campo G. Short Physical Performance Battery and all-cause mortality: systematic review and meta-analysis. BMC Medicine. 2016;14:215. DOI: 10.1186/s12916-016-0763-7 PMID: 28003033

Matsumoto K, Gondo Y, Masui Y, Yasumoto S, Yoshida Y, Ikebe K, Arai Y, Kabayama M, Kamide K, Akasaka H, Ishizaki T. Physical performance reference values for Japanese oldest old: a SONIC study. BMC Geriatrics. 2022;22(1):748. DOI: 10.1186/s12877-022-03299-7 PMID: 36100911

Labott BK, Belkin V, Wollesen B, Voelcker-Rehage C. Enhancing the Short Physical Performance Battery: Proposing Norm Values for the 4-Meter Walking Test for Multimorbid Older Adults. Clinical Interventions in Aging. 2026;21:585052. DOI: 10.2147/CIA.S585052 PMID: 42231930 ※4m版の採点基準と、虚弱な集団での歩行の床効果はこの論文から引用しています。

Guralnik JM, Ferrucci L, Pieper CF, Leveille SG, Markides KS, Ostir GV, Studenski S, Berkman LF, Wallace RB. Lower extremity function and subsequent disability: consistency across studies, predictive models, and value of gait speed alone compared with the short physical performance battery. Journals of Gerontology Series A. 2000;55(4):M221-231. DOI: 10.1093/gerona/55.4.m221 PMID: 10811152 ※最初のSPPBが8フィートで測っていたこと、歩行速度の区切り、2回測って速いほうを採る手順はこの論文から引用しています。

Perera S, Mody SH, Woodman RC, Studenski SA. Meaningful change and responsiveness in common physical performance measures in older adults. Journal of the American Geriatrics Society. 2006;54(5):743–749. PMID: 16696738

※本記事は上記論文を運営者が読み、自身の言葉で要約したものです。原著の抄録・本文の転載および全訳は行っていません。診断・治療の判断は主治医・担当の専門職にご相談ください。

タグ:評価 / SPPB / 評価項目 / 予後予測 / 基準値 / 訪問リハビリ

この記事について

本記事は公開されている論文をもとに、あいす・理学療法士(10年目)が要約・解説したものです。原著の内容を完全に再現するものではないため、 臨床判断の際は必ず原著をご確認ください。

また、本記事は特定の個人に対する診断・治療の助言ではありません。 症状についてのご相談は主治医・かかりつけの専門職へお願いします。