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訪問看護計画書のリハビリ目標の書き方|本人の言葉で、生活の場面で書く

訪問看護計画書のリハビリ目標の書き方|本人の言葉で、生活の場面で書く

この記事は2026年10月3日時点の内容です。書類の決まりは介護保険の基準(厚生省令)と厚生労働省の通知(老企第55号)、目標設定の効果はCochraneレビューを根拠にしています(出典は記事の最後にまとめています)。書類の運用は事業所によっても異なります。

ぺんた

先輩、病院のときはリハ部門だけで実施計画書、総合実施計画書、退院サマリー…と書類がたくさんあったのに、訪問看護に来たらリハ専用の書類が見当たらないんです。

あいす

私も移ってきたとき、そこに戸惑ったんだよね。訪問看護では、リハの内容も看護師さんと一緒に作る「計画書」と「報告書」の2つに書くんです。しかも計画書は、利用者さん本人とご家族が受け取って読む書類。だからこそ、その1枚に何を書くかが大事になります。

病院では、リハビリテーション部門だけで作る書類がいくつもあります。訪問看護ステーションでは、理学療法士が関わる書類は訪問看護計画書と訪問看護報告書の2つです(毎回の訪問の記録は、別に訪問看護記録書に残します)。どちらも看護師と理学療法士が一緒に作ります。

そして、2つは読む人が少し違います。計画書は利用者・家族に説明して同意をもらい、利用者に渡す書類で、主治医にも提出します。報告書は主治医に提出する書類です。

毎月の作成時期になると、「目標の欄、先月と同じでいいのかな」と手が止まる人は多いはずです。この記事では、計画書の「看護・リハビリテーションの目標」の欄について、国の記載要領に何と書いてあるかと、目標をきちんと立てると何が変わるのか(研究の結果)を確かめます。

結論

計画書の目標は「何の訓練をするか」ではなく、「本人の希望を踏まえた、生活の場面での目標」で書く。研究では、目標設定の効果は体の機能より、気持ちや自信の指標に出やすい可能性があります(確実性は非常に低い)。

  • 記載要領には、目標は「主治の医師の指示、利用者の希望や心身の状況等を踏まえ」利用者の療養上の目標として設定する、と書かれている
  • 理学療法士が訪問する場合は、計画書・報告書とも看護師と理学療法士の両方が作成者欄に記入する
  • 39研究・2,846人のCochraneレビューでは、目標設定なしと比べて、生活の質・気持ちの面(SMD 0.53)と自己効力感(SMD 1.07)が改善。活動の指標にははっきりした差が見られなかった
  • 本人と話し合って決めるなど目標設定を工夫した場合は、通常のケアと比べて自己効力感と満足度は改善したが、生活の質の差ははっきりしなかった
  • 根拠の確実性は「低い〜非常に低い」。目標を書くだけで歩けるようになる、とは言えない

訪問看護では、書類は「2つ」。計画書は本人も読む

まず、病院との違いを整理します。

病院(運営者の経験から) 訪問看護ステーション
リハ部門が作る書類 リハビリテーション実施計画書、リハビリテーション総合実施計画書、サマリーなど、部門で作るものが多い リハ専用の書類はなく、訪問看護計画書と訪問看護報告書に含まれる(毎回の記録は訪問看護記録書)
誰と作るか リハ部門の中で完結するものも多い 看護師と共同で作る
誰が読むか 院内の主治医・他職種 計画書:利用者・家族(説明・同意・交付)、主治医、ケアマネジャー
報告書:主治医

右の列のうち、計画書を利用者に渡すこと、計画書・報告書を主治医に提出することは、介護保険の基準(第69条・第70条)で決められています。ケアマネジャーは、居宅介護支援の基準で、各サービスの計画書の提出を求めることになっています。

病院の書類の種類と運用は、施設や算定する料金によって違います。左の列は運営者が勤めた病院での経験です。

ぺんた

書類が少ないなら、楽になりそうですけど…。

あいす

枚数は減るけど、そのぶん1枚の重みが増えるんだよね。計画書は本人とご家族が手元に置いて読むし、主治医が在宅でのリハの様子を知る手段も、ほぼこの2つだけ。しかも看護の内容と同じ紙に載るから、短く、本人が読んでも分かる生活の言葉で書く必要があります。

記載要領には「利用者の希望を踏まえた療養上の目標」と書いてある

介護保険の訪問看護では、計画書と報告書の書き方は、厚生労働省の通知「訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて」(平成12年 老企第55号)の記載要領で決められています。リハに関わる部分を要約します(医療保険の訪問看護は、別の通知で決められています)。

訪問看護計画書

欄 記載要領の内容(要約)
看護・リハビリテーションの目標 主治の医師の指示、利用者の希望や心身の状況等を踏まえ、利用者の療養上の目標として設定する
問題点・解決策/評価 目標を踏まえて、問題点と解決策、評価を具体的に書く。初回は評価欄が空欄でもよい
作成者①② 氏名と職種を書く。理学療法士等が訪問する場合は①②の両方に記入する(様式では①が看護師・保健師、②が理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)

訪問看護報告書

欄 記載要領の内容(要約)
訪問日 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問した日は◇印
病状の経過 病状や日常生活動作(ADL)の状況などを書く
看護の内容 実施した内容を具体的に書く(欄の名前は、通知の版によって「看護の内容」「看護・リハビリテーションの内容」と異なります)
作成者①② 計画書と同じく、理学療法士等が訪問した場合は両方に記入する

ここで押さえたいのは、目標の欄が「リハの目標」ではなく「看護・リハビリテーションの目標」であり、しかも「利用者の療養上の目標」として書くよう求められている点です。「関節可動域練習」「筋力訓練」は手段であって、利用者の目標ではありません。

研究では、効果は「体」より「気持ち」の指標に出やすい

では、目標をきちんと立てることに意味はあるのでしょうか。リハビリテーションでの目標設定を調べたCochraneレビュー(Levack ら, 2015)を見ます。

  • 対象:病気やけがで障害を負い、リハビリテーションを受けている成人
  • 研究:39研究・2,846人(筋骨格系の疾患・慢性疼痛、脳卒中を含む神経疾患、精神疾患、心疾患、加齢に伴う障害など)
  • 場:入院・外来だけでなく、約半数(19研究)が地域・在宅・施設で行われ、そのうち3研究は訪問看護でした
  • 比べたもの:①目標設定あり vs なし/②構造化された目標設定(本人と話し合って決める、目標達成スケールを使うなど) vs 通常のケア(通常のケアの中にも、何らかの目標設定が含まれうる)

訪問看護では目標の欄への記入が必須なので、「目標を立てない」という選択肢はありません。読者の状況に近いのは②の比較です。

①目標設定あり vs なし

指標 効果(SMD) 95%信頼区間 研究数・人数 確実性
生活の質・気持ちの状態 0.53 0.17〜0.88 8研究・446人 非常に低い
自己効力感(自分でできるという感覚) 1.07 0.64〜1.49 3研究・108人 非常に低い
活動(動作・歩行など) 0.04 −0.22〜0.31 4研究・223人 低い
リハへの取り組み 0.30 −0.07〜0.66 9研究・369人 非常に低い

②構造化された目標設定 vs 通常のケア

指標 効果(SMD) 95%信頼区間 研究数・人数 確実性
生活の質・気持ちの状態 0.18 −0.19〜0.56 5研究・441人 低い
自己効力感 0.37 0.02〜0.71 2研究・134人 非常に低い
サービスへの満足度 0.33 0.10〜0.56 5研究・309人 低い※
活動 0.17 −0.15〜0.49 4研究・277人 低い

※満足度の確実性は、抄録では「低い」、考察では「非常に低い」と、原典の中で表記が分かれています。また、バイアスの高い研究を除くと差ははっきりしなくなりました。

SMD(標準化平均差)は、目安として0.2で小さい効果、0.5で中くらい、0.8以上で大きい効果と読みます(レビューが引用しているCochrane Handbookの目安)。

著者らの結論は、目標設定は一部の結果を改善するかもしれないが、根拠の確実性は非常に低い。最も根拠があるのは、体の結果よりも、生活の質・気持ち・自己効力感といった心理社会的な結果というものです。

つまり、目標を書いたからといって、それだけで歩ける距離が伸びるとは示されていません。効果が出やすいのは、本人の「自分でできそう」という感覚のほうです。読者の状況に近い②の比較では、生活の質の差ははっきりせず、自己効力感の改善も2研究だけの結果です。

それでも運営者は、在宅のリハではセラピストがいない時間の過ごし方が大きいと考えています。週1〜2回の訪問以外の時間に本人が動くかどうかに、自信が関わるとすれば、目標設定の意味は在宅でこそ大きいはずです(ここは運営者の見解です)。

現場で意識したい3つのこと

1. 目標は「訓練」ではなく、本人が読んで分かる「生活の場面」で書く ◎△

計画書は、主な内容を利用者・家族に説明して同意をもらい、利用者に渡す書類です(基準 第70条)。記載要領も、目標を「利用者の療養上の目標」として書くよう求めています。本人が読んで「これを目指すのか」と分かることが大切なので、運営者は主語を本人にして、生活のどの場面で、何ができるようになるかを書くようにしています。「ROM」「下肢筋力」などの専門用語は、本人には伝わりにくい言葉です。下の例は、説明のために作ったものです。

✕ 訓練内容になっている ◯ 生活の場面の目標
下肢筋力訓練、歩行練習を行う ◯月までに、ベッドから自宅のトイレまで見守りで歩いて行ける
ROM訓練を継続する 自分で上着の袖に腕を通して着替えられる
転倒予防に努める 夜間のトイレ移動を、手すりと足元灯を使って一人で行える

訓練内容は、目標を達成するための手段として「問題点・解決策」の欄に書くのが自然だと考えています。

根拠:計画書は利用者・家族に説明・同意・交付(基準 第70条)◎/記載要領「利用者の療養上の目標として設定」◎+生活の場面で書くのは運営者の解釈 △

2. 本人の言葉を1つ聞いてから書く △

記載要領には「利用者の希望」を踏まえることが明記されています。研究では、本人と話し合って決める構造化された目標設定でも、通常のケアと比べて自己効力感が上がっていました(2研究・確実性は非常に低い)。毎月の作成時期に、「今月、家でできるようになりたいことは?」を1つだけ聞いてから目標を書くと、本人の言葉が計画書に入ります。

ただし、これで本人の自信が上がるかどうかを、日本の訪問看護で直接確かめた研究ではありません。

根拠:記載要領の「利用者の希望」◎+構造化された目標設定の研究結果からの推測 △

3. 評価の欄には「先月と比べられる数字」を添える △

目標を生活の場面で書いたら、評価の欄には変化が分かる数字を添えます。たとえば歩行速度や5回立ち上がりの秒数です。主治医は在宅での様子を直接見られないので、報告書の「病状の経過」の欄も含め、先月と比べられる数字があると伝わりやすくなります。

どの検査で何を見るかは、理学療法の評価項目一覧や、歩行速度の記事、5回立ち上がりの記事にまとめています。

根拠:記載要領の「評価を具体的に」からの運営者の判断 △

この記事で言えないこと

通知について

  • この記事は介護保険の訪問看護の通知(老企第55号)をもとにしています。医療保険の訪問看護は別の通知(訪問看護計画書等の記載要領等について)で決められていて、その内容はこの記事では照合していません
  • 厚生労働省は2025年12月に、この通知の改正資料(新旧対照表)を掲載しています。この改正がいつから適用されるかは確認できていません。目標の欄の文言は、改正の前後で同じです
  • 運用は事業所によって異なります。最新の通知と、所属事業所のルールを確認してください
  • 病院のリハビリテーション書類(実施計画書など)の種類と要件は、運営者の経験として書いたもので、制度の詳細は扱っていません
  • 訪問リハビリテーション(病院・診療所・老健からの訪問)の書類は、この記事の対象外です

Cochraneレビューについて

  • 2015年に公開されたレビューで、2013年12月までの研究しか含まれていません
  • 根拠の確実性は「低い」〜「非常に低い」で、著者らも、今後の研究で結果が変わる可能性が高いとしています。研究どうしのばらつき(異質性)が中程度〜大きく、準ランダム化の研究も含まれます。生活の質と気持ちの指標は、あとから1つにまとめて解析されています
  • 自己効力感の1.07は、スポーツ外傷・腰痛・変形性関節症の3研究(平均25〜63歳)から出た数字で、在宅の高齢者にそのまま当てはめられるとは限りません
  • ②の自己効力感(0.37)には香港の地域訪問看護の研究(平均73歳)が含まれますが、著者らはこの研究の推定の正確さに疑問があるとしています
  • 訪問看護の研究も3つ含まれますが、日本の訪問看護で計画書の書き方を変えたときの効果を直接調べたものではありません
  • 「目標設定」の中身は研究ごとに異なります(目標達成スケール、本人参加型の話し合いなど)。どの方法が最もよいかは、このレビューからは決められません

次の訪問で変えること

計画書を書く前に、「今月、家でできるようになりたいことは?」を1つ聞く。その答えを主語にして、生活の場面で目標を書く。

根拠:記載要領「利用者の希望…を踏まえ、利用者の療養上の目標として」◎/構造化された目標設定で自己効力感 SMD 0.37(95%CI 0.02〜0.71・2研究・確実性 非常に低い)△

まとめ

  • 訪問看護で理学療法士が関わる書類は計画書と報告書の2つ。計画書は利用者・家族に説明して渡す書類で、どちらも主治医に提出する
  • 記載要領は、目標を利用者の希望を踏まえた「療養上の目標」として書くよう求めている
  • 目標設定の効果は、気持ち・自己効力感の指標に出やすく、活動の指標でははっきりした差が見られなかった(確実性は低い〜非常に低い)
  • だから目標は本人の言葉で、生活の場面で書き、評価の欄には先月と比べられる数字を添える

理学療法士の訪問が制度上どういう位置づけなのかは、訪問看護のリハと訪問リハは何が違う?にまとめています。


出典

Levack WMM, Weatherall M, Hay-Smith EJC, Dean SG, McPherson K, Siegert RJ. Goal setting and strategies to enhance goal pursuit for adults with acquired disability participating in rehabilitation. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015;(7):CD009727. DOI: 10.1002/14651858.CD009727.pub2 / PMID: 26189709 / 全文(PMC):PMC8941379

訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて(平成12年3月3日 老企第55号 厚生労働省老人保健福祉局企画課長通知)

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第69条第3項(主治医への提出)・第70条第3項・第4項(利用者・家族への説明・同意、利用者への交付)

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第12号(ケアマネジャーによる計画の提出の求め)

※本記事は上記の論文・通知を運営者が読み、自身の言葉で要約したものです。論文の抄録・本文・図表、通知の全文は転載していません。

タグ:訪問看護 / 訪問看護計画書 / 目標設定 / 理学療法士 / 訪問リハビリ

この記事を書いた人

あいす理学療法士(10年目)

  • 理学療法士(国家資格)
  • 病院で9年(回復期リハビリテーション病棟・一般病棟・地域包括医療病棟)
  • 現在は訪問看護ステーションで在宅の理学療法を担当

数値は原著論文で確認できたものだけを載せ、出典を記事末にまとめています。 誤りに気づいたときは本文を直し、内容が変わった場合は最終更新日を表示します。

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この記事について

本記事は公開されている論文をもとに、あいす・理学療法士(10年目)が要約・解説したものです。原著の内容を完全に再現するものではないため、 臨床判断の際は必ず原著をご確認ください。

また、本記事は特定の個人に対する診断・治療の助言ではありません。 症状についてのご相談は主治医・かかりつけの専門職へお願いします。