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訪問看護報告書のリハの書き方|変化は数字で、意味のある変化の目安つき

訪問看護報告書のリハの書き方|変化は数字で、意味のある変化の目安つき

この記事は2026年10月4日時点の内容です。書類の決まりは介護保険の基準(厚生省令)と厚生労働省の通知(老企第55号)、変化の大きさの目安は高齢者を対象にした臨床試験の解析を根拠にしています(出典は記事の最後にまとめています)。書類の運用は事業所によっても異なります。

ぺんた

先輩、報告書の「病状の経過」って、毎月「著変なし」「歩行安定」くらいしか書けなくて…。何を書けばいいんでしょう?

あいす

私も最初はそうだった。でも主治医は、在宅での様子をほぼこの紙でしか知らないんだよね。だから先月と比べられる数字を1つ入れるだけで、伝わり方がぜんぜん変わります。問題は「どのくらい変わったら、変わったと言っていいのか」なんです。

前回の記事では、訪問看護計画書の目標の書き方を整理しました。今回はもう1つの書類、訪問看護報告書です。

報告書は主治医に定期的に提出する書類(実務では毎月のことが多い)で、計画書を立てたあと「実際にどう変わったか」を伝える役割があります。この記事では、国の記載要領が報告書に何を求めているかと、歩行速度やSPPBが「どれだけ変わったら意味のある変化か」を、研究の数字で確かめます。

結論

報告書の「病状の経過」には、先月と同じ条件で測った数字を並べて書く。ただし1回の差は測定誤差に埋もれやすいので、改善・低下は数か月の流れで判断する。

  • 記載要領では、報告書の「病状の経過」に病状や日常生活動作(ADL)の状況を、「看護の内容」に実施した内容を具体的に書くよう求めている
  • 70〜89歳の424人を1年追った研究では、意味のある変化の大きさの目安は歩行速度で0.03〜0.05 m/s(大きな変化は0.08 m/s)、SPPBで0.3〜0.8点(大きな変化は0.4〜1.5点)だった(2つの推定方法を合わせた目安)
  • ただしこれは集団の1年間の変化から出した目安で、1人の1か月の差を判定する基準ではない。歩行速度の測定誤差(SEM)は約0.04 m/sで、小さな変化の目安とほぼ同じ大きさ
  • だから1回の差だけで「改善」と書かない。数字を並べ、同じ方向に何か月か続いたら「改善傾向」と書く

報告書は何を書く書類か

介護保険の訪問看護では、計画書と報告書を主治医に提出することが基準で決まっています。報告書の書き方は、厚生労働省の通知「訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて」(平成12年 老企第55号)の記載要領にあります。リハに関わる部分を要約します。

欄 記載要領の内容(要約)
訪問日 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問した日は◇印
病状の経過 利用者の病状、日常生活動作(ADL)の状況などを書く
看護の内容 実施した内容を具体的に書く(欄の名前は、通知の版によって「看護の内容」「看護・リハビリテーションの内容」と異なります)
計画書との重複 先に主治医に出した計画書と重なる部分は、報告書では省略してよい

つまり報告書は、計画書で立てた目標に対して、ADLや病状がどう動いたかを具体的に伝える書類です。「著変なし」は間違いではありませんが、何をもって変わっていないと判断したのかは、主治医には伝わりません。

ぺんた

数字を書くのはわかりました。でも、歩行速度が0.02上がったら「改善」って書いていいんですか?

あいす

そこが今日の本題。測るたびに少しはぶれるから、どこからが本当の変化なのかの目安が要るんです。

研究では「意味のある変化」はどのくらいか

アメリカの臨床試験LIFE-Pのデータを使って、歩行速度などの「意味のある変化の大きさ」を調べた研究(Kwon ら, 2009)を見ます。

  • 対象:座りがちで、SPPBが10点未満の70〜89歳の424人(女性69%)。400mを15分以内で歩ける人たち
  • はじめの状態:4m歩行速度は平均0.74 m/s、SPPBは平均7.5点
  • 方法:1年間の変化の大きさを、2つの方法で推定した。①データのばらつき(標準偏差・測定誤差)から求める方法、②「約400m歩く」「数ブロック歩く」「階段を1階分上る」の難しさを本人が5段階で答え、その変化と照らし合わせる方法

結果

指標 小さいが意味のある変化 大きな変化 測定誤差(SEM)※
4m歩行速度 0.03〜0.05 m/s 0.08 m/s 0.04 m/s
SPPB 0.3〜0.8点 0.4〜1.5点 0.45点

※SEMは、別の研究で報告された測り直しの一致度から計算した値です。

上の「小さい」「大きい」の数字は、2つの方法の結果を著者らがまとめた目安です。「良くなる方向」と「悪くなる方向」で、意味のある変化の大きさに統計的な差は見られませんでしたが、著者らは人数が足りずはっきりとは言えないとしています。

著者らは、1点未満の変化のような小さな目安は1人では捉えにくく、集団の比較に使うものだと述べています。なお、歩行速度の目安は研究によって幅があり、別の研究(Perera 2006)では約0.05/0.10 m/sとされています(歩行速度の記事)。

秒に直すと、どのくらいか

歩行速度0.74 m/sの人が4mを歩くと、約5.4秒です。

  • 0.05 m/s速くなる(0.79 m/s)と、約5.1秒。差は約0.3秒
  • 0.08 m/s速くなる(0.82 m/s)と、約4.9秒。差は約0.5秒

ストップウォッチの押し方ひとつで動いてしまう差です。だからこそ、毎回同じ条件で測ることが、数字を書く前提になります。この研究の歩行速度は、止まった状態から歩き出して測っています。助走をつけて途中から測る方法とは、数字をそのまま比べられません。

現場で意識したい3つのこと

1. 「病状の経過」に、先月と今月の数字を並べて書く ◎△

記載要領は「病状の経過」にADLの状況を書くよう求めています。運営者はここに、先月と今月の数字を矢印で並べ、そのあとに生活の場面を1文添えるようにしています。下の例は、説明のために作ったものです。

✕ 伝わりにくい ◯ 伝わりやすい
歩行安定。著変なし。 歩行速度(4m・普段の速さ)0.62→0.70 m/s。屋内を杖なしで歩く場面が増えた
下肢筋力向上。 5回立ち上がり(肘掛けなしの椅子・腕組み)15.8→13.2秒。トイレからの立ち上がりで手すりを強く引かなくなった

測定条件(距離・椅子・腕の位置)を書いておくと、翌月に別のスタッフが測っても同じ条件でそろえられます。

根拠:記載要領「病状の経過」にADLの状況を書く ◎/数字と生活の場面を並べる書き方は運営者の工夫 △

2. 1回の差で「改善」と書かず、数か月の流れで判断する △

研究の目安は集団の1年間の変化から出したもので、1人の1か月の差をそのまま当てはめる基準ではありません。しかも歩行速度の測定誤差(約0.04 m/s)は、小さな変化の目安とほぼ同じ大きさです。運営者は次のように書き分けています。

先月との差 報告書での書き方
0.03 m/s未満 横ばい(意味のある変化の目安にも、測定誤差にも届かない)
0.03 m/s以上 数字だけを書き、1回では「改善」「低下」と言い切らない
同じ方向に2〜3か月続く 改善傾向/低下傾向と書く

低下の方向にも同じ見方をします。ただし、生活の場面での変化(転倒・ふらつき・食欲や体調の変化など)を伴う低下は、数か月待たずに看護師と共有し、報告書にもその事実を書きます。

SPPBは1点刻みの点数です。1点の変化は研究の目安の範囲に入りますが、SPPBの測定誤差(約0.45点)もあるので、1回の1点の差だけで判断しないのは歩行速度と同じです。

根拠:意味のある変化 0.03〜0.05 m/s・測定誤差 約0.04 m/s・小さな目安は集団向け(Kwon 2009)◎/報告書での書き分けは研究結果からの運営者の判断 △

3. 5回立ち上がりや片脚立ちは、数字と条件をそのまま書く △

運営者は在宅では、TUGより5回立ち上がりと片脚立ちをよく使います。TUGは3mの直線と折り返しが要りますが、それを作れない家もあるからです。

ただ、今回の研究で目安が出ているのは歩行速度とSPPBだけです。5回立ち上がりと片脚立ちの「意味のある変化の大きさ」は、この研究からは言えません。片脚立ちの記事で扱った研究でも、変化の目安は調べられていませんでした。

そのため、この2つは「改善」と言い切らず、数字と測定条件を並べて、何か月か続けて方向を見るのが安全だと考えています。

根拠:在宅での使い分けは運営者の経験 △/5回立ち上がり・片脚立ちは今回の研究の対象外

この記事で言えないこと

通知について

  • この記事は介護保険の訪問看護の基準と通知(老企第55号)をもとにしています。医療保険の訪問看護は別の通知で決められていて、その内容はこの記事では照合していません
  • 運用は事業所によって異なります。最新の通知と、所属事業所のルールを確認してください

研究について

  • 対象はアメリカの、座りがちで歩く力が少し落ちた70〜89歳(SPPB 10点未満・400mを15分以内で歩ける)です。より重い要介護の人は含まれていません
  • 推定は1年間の変化から出したもので、1か月ごとの変化を直接調べたものではありません
  • 「意味のある変化」の基準は、本人が申告した歩く・階段を上る難しさと、データのばらつきです。転倒や入院が減るかどうかで決めたものではありません
  • 半数以上の人が始めも終わりも「難しさなし」と答えたため、本人の申告と照らし合わせる解析からは外れています。12か月後のデータが欠けた人もいます(歩行速度で9%)
  • 対象の約半数は運動プログラムを受けた人で、2つの群をまとめて解析しています
  • 数字は集団での推定です。1人の利用者さんに当てはめるときは、測定条件のぶれも含めて慎重に読む必要があります
  • 2009年の研究で、目安は手法によって幅があります(そのため「0.03〜0.05」のような幅で示されています)

次の報告書で変えること

「病状の経過」に、歩行速度か5回立ち上がりを「先月→今月」の2つの数字と測定条件で書く。1回の差では「改善」と言い切らず、同じ方向に続いたら「改善傾向」と書く。

根拠:記載要領「病状の経過」にADLの状況を書く ◎/意味のある変化の目安は集団・1年の変化から出したもので、測定誤差は約0.04 m/s(Kwon 2009)◎+書き分けは運営者の判断 △

まとめ

  • 報告書の「病状の経過」には、記載要領どおり病状とADLの状況を書く。先月と比べられる数字を入れると主治医に伝わりやすい
  • 高齢者424人の研究では、歩行速度の意味のある変化の目安は0.03〜0.05 m/s、大きな変化は0.08 m/s。SPPBは0.3〜0.8点(大きな変化は0.4〜1.5点)。ただし集団の1年間の目安
  • 歩行速度の測定誤差は約0.04 m/s。1回の差で改善と言い切らず、同じ条件で測った数字の流れで判断する
  • 5回立ち上がりや片脚立ちは目安が出ていないので、数字と条件を並べて方向を見る

計画書の目標の書き方は訪問看護計画書のリハビリ目標の書き方に、歩行速度そのものの意味は歩行速度の記事に、SPPBはSPPBの記事にまとめています。


出典

Kwon S, Perera S, Pahor M, Katula JA, King AC, Groessl EJ, Studenski SA. What is a meaningful change in physical performance? Findings from a clinical trial in older adults (the LIFE-P study). The Journal of Nutrition, Health & Aging. 2009;13(6):538-544. DOI: 10.1007/s12603-009-0104-z / PMID: 19536422 / 全文(PMC):PMC3100159

訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて(平成12年3月 老企第55号 厚生労働省老人保健福祉局企画課長通知)

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第69条第3項(主治医への計画書・報告書の提出)

※本記事は上記の論文・通知を運営者が読み、自身の言葉で要約したものです。論文の抄録・本文・図表、通知の全文は転載していません。

タグ:訪問看護 / 訪問看護報告書 / 歩行速度 / SPPB / 理学療法士

この記事を書いた人

あいす理学療法士(10年目)

  • 理学療法士(国家資格)
  • 病院で9年(回復期リハビリテーション病棟・一般病棟・地域包括医療病棟)
  • 現在は訪問看護ステーションで在宅の理学療法を担当

数値は原著論文で確認できたものだけを載せ、出典を記事末にまとめています。 誤りに気づいたときは本文を直し、内容が変わった場合は最終更新日を表示します。

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この記事について

本記事は公開されている論文をもとに、あいす・理学療法士(10年目)が要約・解説したものです。原著の内容を完全に再現するものではないため、 臨床判断の際は必ず原著をご確認ください。

また、本記事は特定の個人に対する診断・治療の助言ではありません。 症状についてのご相談は主治医・かかりつけの専門職へお願いします。