片脚立ちは何秒なら危ない?|5秒・15秒の出どころと日本人の年代別の値

ぺんた
片脚立ちが5秒しかできませんでした。転倒リスクが高い、と書いていいですか?
あいす
その5秒がどんな研究で使われた線なのかは、先に確かめておきたいところだよね。線ごとに、確かめられていることが違うんです。
開眼片脚立ちは、ストップウォッチ1つで測れる、在宅でもいちばん手軽なバランスの検査です。ただ、カットオフ値として「5秒」「15秒」など複数の数字が出回っていて、それぞれの線で何が確かめられているのかは、あまり共有されていません。
この記事では、3つの研究を組み合わせます。①転倒を予測できるかを調べた系統的レビューで、転倒研究で使われた線と当たり具合を確かめます。②日本の運動器不安定症の「15秒」を調べた研究で、その線で何が確かめられているかを見ます。③日本人の年代別・男女別の値で、その線が同年代のどのあたりに来るのかを確かめます。①は海外の研究が中心で日本人の分布が分からず、③は分布が分かっても転倒との関係は見ていません。互いの穴を埋める組み合わせです。
結論
片脚立ちの秒数は、単独では転倒を予測する力が弱い検査です。線を超えたかどうかより、同年代と比べた位置と前回からの変化で使うほうが情報になります。
- 転倒を追った研究で使われた線は「5秒以下」「3秒以下」など。5秒以下で拾えたのは、けがをする転倒をした人の3分の1ほど(感度0.36。繰り返し転倒を見た別の研究でも0.33)
- 「15秒」は運動器不安定症(転倒しやすくなった状態)の診断基準の1つ。ただし、15秒を調べた日本の研究が確かめたのは歩く能力との差で、その後の転倒は追っていない
- 日本の自立した高齢者では、80〜84歳の平均が男性26.0秒・女性20.0秒。80代前半では、15秒は男女とも真ん中の層に入る
- 測り方(靴・腕の位置・最大時間・脚の選び方)は研究ごとに違う。同じ手順で測り続けることが前提
①転倒を追った研究では、5秒以下でも3分の1しか拾えない
①は、機能的リーチテスト・片脚立ち・Tinetti(POMA)の3つについて、転倒をどこまで予測できるかを調べた系統的レビューです(Physical Therapy 2021)。60歳以上を対象に、先に検査をして、その後の転倒を記録した研究(前向き研究)だけを集めています。21研究のうち、片脚立ちを扱ったのは6研究でした。
感度と特異度が出ていた片脚立ちの研究は、次の3つです。
| 研究 | 対象 | 線 | 見た転倒 | 感度 | 特異度 |
|---|---|---|---|---|---|
| Beauchet 2010 | フランスの地域在住1,759人(平均70.7歳)・12か月 | 5秒以下 | 2回以上の転倒 | 0.33 | 0.71 |
| Vellas 1997 | アメリカの健康な地域在住のボランティア316人(平均72.7歳)・36か月 | 5秒以下 | けがをする転倒 | 0.36 | 0.76 |
| Shimada 2009 | 日本の虚弱高齢者455人(平均80.5歳)・約1年 | 3秒以下 | 転倒 | 0.51 | 0.61 |
感度は、実際に転倒した人のうち、線で「危ない」と判定できた割合です。5秒以下で拾えたのは、けがをする転倒をした人の3分の1ほどでした(Vellas)。Beauchetの研究でも感度は0.33で、5秒以下だった人のうち実際に繰り返し転倒したのは14.3%と、対象者全体の12.6%とほとんど変わりませんでした(この0.33が5秒の線だけの値かは、後述のとおり原著で確認できていません)。日本の虚弱高齢者で3秒以下にしても、拾えたのは半分でした。
ほかの研究は、見分ける力をAUCで出しています。AUCは0.5なら当てずっぽうと同じ、1.0なら完全に見分けられる、という目安です。
| 研究 | 対象 | AUC |
|---|---|---|
| Bongue 2011 | フランスの地域在住1,759人(平均70.7歳) | 利き脚0.55(0.53〜0.58)/反対の脚0.56(0.53〜0.59) |
| Crenshaw 2020 | アメリカの地域在住の女性125人(平均77.1歳) | 0.56 |
| Lin 2004 | 台湾の地域在住1,200人(平均73.4歳) | 0.53 |
どの研究も、0.5をわずかに上回る程度でした。なお、Bongueの研究では利き脚で12.7秒未満、反対の脚で7.6秒未満という線も示されています。同じ片脚立ちでも、研究によって使われている線はばらばらです。
著者らは、片脚立ちを含む3つの検査のどれも「単独では将来の転倒を予測できない」と結論しています。そのうえで、これらの検査はバランスの弱い部分を見つけて、時間とともに追いかけることには価値があり、複数の検査を組み合わせて見るべきだ、と書いています。使うな、ではなく、使いどころが違うという結論です。
参考:2026年の前向き研究
カナダの地域在住高齢者486人を12か月追った研究(Age and Ageing 2026)では、1回以上の転倒の予測力(AUC)は、片脚立ちの0.561(0.51〜0.61)から歩行速度の0.593(0.50〜0.69)まででした。片脚立ちだけでなく、TUGや歩行速度を含む検査がどれも同じくらい低いという結果です。著者らは、これらの検査を世界ガイドライン(WFG 2022)の流れに加えても、リスクの分け方は良くならなかったと結論しています。この論文は全文が無料で読めず、ここに書いたのは抄録の範囲です。
片脚立ちの測り方は、研究ごとにばらばら
①のレビューでは、6研究すべてが開眼で測っていました。一方で、それ以外の手順はそろっていません。
- 最大時間:30秒・60秒・120秒と研究によって違う(書いていない研究もある)
- 脚:4研究が「本人が選んだ脚」
- 回数:書いてあったのは2研究だけで、どちらも「いちばん長かった記録」を採用
この記事で使う日本の2つの研究も、手順が違います。
| 靴 | 腕 | 最大時間 | 脚 | 採用する記録 | |
|---|---|---|---|---|---|
| ②15秒の研究 | 裸足 | 体の横 | 120秒 | 左右とも | 左右2回ずつ測って最長 |
| ③年代別の値 | 用意した同じ種類の靴 | 手は腰 | 60秒 | 好きなほうの脚 | 2回のよいほう |
最大時間が30秒の研究と120秒の研究では、上のほうの人の差がまったく違って見えます。研究同士の線をそのまま並べられない理由のひとつです。
②「15秒」は運動器不安定症の基準の1つ
日本でよく使われるもう1つの線が、15秒です。
2006年に日本整形外科学会などの3学会が「運動器不安定症」という疾患名を示しました。運動機能が低下し、転倒しやすくなった状態とされています。その運動機能の評価として、開眼片脚起立時間が15秒未満、またはTUGが11秒以上という基準が定められています(運動機能の評価のほかに、疾患の既往や日常生活の自立度の条件もあります)。
この15秒について調べた日本の研究(理学療法科学 2011)は、日常生活が自立した60歳以上の地域在住高齢者522人(平均73.1歳)を対象にしています。15秒以上立てた群と立てなかった群を比べると、立てなかった群のほうが、最速での歩行速度・6分間歩行距離・10m障害物歩行の時間のすべてで有意に劣っていました(遅い・短い・時間がかかる)。15秒に届かなかった人は、全体の39.1%いました。
著者らは、15秒を境にした評価は歩く能力の低下を見つけるうえで臨床的な意味があることが示唆された、と述べています。一方で、この研究は歩く能力だけを比べたもので、15秒に届かない人がその後転倒しやすいかどうかは、今後調べる必要があると書いています。
つまり、15秒は転倒しやすさを含む病態の基準として使われている線ですが、この研究で確かめられたのは歩く能力との差までです。
ぺんた
5秒と15秒、どっちを使えばいいんですか?
あいす
どっちが正しい、というより、それぞれの線で何が確かめられているかが違うんだよね。何を知りたくて測るのかを先に決めておくと迷わないところ。
③日本人の80代前半では、15秒は真ん中あたり
では、5秒や15秒は、日本人の同年代の中でどのあたりに来るのでしょうか。
③は、東京都健康長寿医療センター研究所のグループが、日本の6つのコホート研究をまとめて、障害のない地域在住高齢者の体力の値を年代別・男女別に示したものです(PLoS One 2014)。片脚立ちは、6コホートのうち4コホートの3,229人(男性1,463人・女性1,766人)で測られています。
年代別の平均(秒)は次のとおりでした。
| 年代 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 65〜69歳 | 46.9(±20.6) | 48.5(±18.7) |
| 70〜74歳 | 41.7(±21.9) | 38.9(±22.7) |
| 75〜79歳 | 33.2(±22.9) | 28.4(±22.4) |
| 80〜84歳 | 26.0(±22.5) | 20.0(±19.9) |
| 85歳以上 | 21.9(±23.5) | 10.6(±15.2) |
ばらつき(±の値)がとても大きいのが特徴です。上限が60秒なので、65〜74歳では多くの人が60秒で頭打ちになっています(論文も天井効果があると書いています)。平均よりも、次の5段階の区切りのほうが実態をつかみやすくなります。
いちばん下の層(下位20%)に入る秒数は次のとおりです。
| 年代 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 65〜69歳 | 25.0秒未満 | 29.0秒未満 |
| 70〜74歳 | 15.0秒未満 | 12.0秒未満 |
| 75〜79歳 | 7.0秒未満 | 6.0秒未満 |
| 80〜84歳 | 4.0秒未満 | 3.0秒未満 |
| 85歳以上 | 3.0秒未満 | 2.0秒未満 |
ここから3つのことが読めます。
- 15秒の線は、70〜74歳の男性では下位20%の境目にあたります。80〜84歳では、15秒は男性で12.0〜27.9秒、女性で8.0〜16.9秒という真ん中の層(第3五分位)に入ります。80代前半で15秒に届かないのは、珍しいことではありません
- 5秒の線は、80〜84歳では下から2番目の層(男性4.0〜11.9秒・女性3.0〜7.9秒)に入ります。75〜79歳では、男女とも下位20%の中です
- 同じ秒数でも、年代によって同年代の中での位置がまったく違います
この値を使うときの注意
③の対象は、健診に参加した障害のない高齢者です。参加率は対象人口の約30%で、著者らは比較的健康な人が参加しやすい選択の偏りを主な限界に挙げ、虚弱な高齢者には当てはまらない可能性があると書いています。また、片脚立ちを測った85歳以上は男性27人・女性48人しかいません。
現場で意識したい3つのこと
1. 秒数は、同年代の5段階のどこに入るかを添えて伝える ◎
「15秒に届きませんでした」だけでは、80代の人には強く響きすぎます。③の区切りを手元に置いておけば、「80代前半の真ん中あたりです」「同年代の下位2割に入っています」と伝えられます。線を超えたかどうかより、同年代の中での位置のほうが、ご本人にも家族にも意味が伝わります。ただし③は自立した健診参加者の値なので、訪問リハの利用者では、下位に入る人が多くなるのは当然という前提で使います。
根拠:日本人3,229人の年代別・男女別の5段階(Seino 2014)◎/訪問リハの利用者への当てはめは推測 △
2. 転倒リスクは片脚立ち1つで決めず、「転びましたか」と聞くところから入る ◎
5秒以下の線で拾えたのは、けがをする転倒をした人の3分の1ほどでした。片脚立ちは「バランスのどこが弱いか」を見る検査として位置づけ、転倒リスクは過去1年の転倒を聞くところから組み立てます。その流れは転倒リスクはどう評価する?|世界ガイドラインWFG 2022の「一本の流れ」にまとめています。
根拠:5秒以下の感度0.36(けがをする転倒)、AUCは0.53〜0.56(Omaña 2021)◎/転倒歴から入る評価の順番はWFG 2022 ◎/ただし、歩行速度やTUGを含む検査も予測力は同じくらい低く、検査を使わない流れでも低リスクとされた人の41%が転倒したという報告あり(Saunders 2026・抄録の範囲)
3. 「前回と比べてどうか」を追いかける △
①の著者らも、片脚立ちはバランスの弱い部分を時間とともに追いかけることに価値があると書いています。1回の秒数で判定するより、同じ手順で測った前回との差を見るほうが、介入の手応えを確かめる材料になります。ただし、何秒変われば意味のある変化か(MCID)は、今回の研究では確かめていません。
根拠:追跡に使うべきという著者の結論 ◎/変化の大きさの目安は未確認 △
この記事で言えないこと
①について
- 片脚立ちの研究は6本で、感度・特異度が出ていたのは3本だけです。対象(地域在住・虚弱)も、追跡期間(約1〜3年)も、見た転倒(すべての転倒・繰り返し・けがをする転倒)もばらばらで、数値を統合してはいません
- 感度・特異度・AUCなどの数値は、すべてレビューの表から取っています。対象者の説明は原著の抄録と照らし、レビューの表の記載と違っていた点(Lin 2004の国、Vellas 1997の対象、Bongue 2011の人数)は原著の抄録に合わせています
- Beauchet 2010とBongue 2011は、人数・平均年齢・女性の割合が一致しており、同じ集団の別の報告である可能性があります。「6研究」が6つの独立した集団とは限りません
- Beauchet 2010の原著は抄録のない短い報告で、表題は片脚立ち中の「腕の位置の変化」を扱っています。感度0.33が「5秒立てなかったこと」だけの値かどうかは、原著で確認できていません
- 研究の質の評価(Tooth Scale、33点満点)は、片脚立ちの研究で平均21.2点でした。感度・特異度を出していた地域在住の2研究は15〜19点です。また、全21研究の95.2%が交絡因子を考慮したかどうかを書いていません
- すべて開眼の研究です。閉眼の片脚立ちについては言えません
②について
- 日常生活が自立した522人の横断研究で、15秒と歩く能力の差を見たものです。転倒との関係は調べていません。
- 著者ら自身が、日常生活に支援が必要な高齢者には結果が当てはまるとは限らない、と書いています
- 15秒という基準がどの研究から導かれたかは、この研究が引用している出典(臨床誌の2007年の記事。全文は確認できていません)までしかたどれていません
③について
- 転倒との関係は見ていません。年代別の分布を示した研究です
- 健診に参加した障害のない人の値で、参加率は約30%です。訪問リハの利用者の値ではありません
- 年代別の値は横断研究で、同じ人が年をとってどう変わるかを追ったものではありません
- 85歳以上は人数が少なく(男性27人・女性48人)、目安にとどまります
3つに共通すること
- 何秒の変化が臨床的に意味のある差か(MCID)は、どの研究でも扱っていません
- 研究ごとに靴・腕の位置・最大時間・脚の選び方・回数が違います。自分の測り方と原典の測り方が同じかどうかで、比べられるかが変わります
次の訪問で変えること
片脚立ちを記録するときは、秒数と一緒に「靴か裸足か・腕の位置・最大何秒で打ち切ったか・どちらの脚か」を残す。
根拠:①の6研究は最大時間30〜120秒・脚の選び方・回数がそろっていない ◎/②は裸足・腕は体の横・最大120秒、③は靴・手は腰・最大60秒 ◎
まとめ
- 転倒を追った研究で使われた線は5秒以下・3秒以下など。5秒以下の感度は0.33〜0.36で、単独では転倒を予測する力が弱い
- 15秒は運動器不安定症の診断基準の1つ。15秒を調べた日本の研究で確かめられたのは、歩く能力との差まで
- 日本の自立した高齢者では、80〜84歳の平均が男性26.0秒・女性20.0秒。この年代では15秒は真ん中の層に入る
- 片脚立ちは「バランスのどこが弱いか」を見て、同じ手順で追いかける検査として使う
ほかの評価項目の「線の出どころ」は、5回立ち上がりの12秒は何の基準?、TUGのカットオフ値13.5秒は使えるのか、歩行速度は「第6のバイタルサイン」にまとめています。転倒予防の運動そのものの効果は地域在住高齢者の転倒予防に運動は効くのか、在宅で使う評価項目の全体像は理学療法の評価項目一覧をご覧ください。
出典
Omaña H, Bezaire K, Brady K, Davies J, Louwagie N, Power S, Santin S, Hunter SW. Functional Reach Test, Single-Leg Stance Test, and Tinetti Performance-Oriented Mobility Assessment for the Prediction of Falls in Older Adults: A Systematic Review. Physical Therapy. 2021;101(10):pzab173. DOI: 10.1093/ptj/pzab173 PMID: 34244801 ※ウェスタンオンタリオ大学のリポジトリで公開されている著者原稿で全文を確認しました。個別研究の対象は、各原著の抄録(PMID 15271124・9180669・21463927・19776609)と照らしました。
Kubo A, Murata S, Otao H, Horie J, Murata J, Miyazaki J, Yamasaki S, Mizota K, Asami T. 運動器不安定症の運動機能評価法に関する検討(Investigation of a Motor Function Assessment Method for Musculoskeletal Ambulation Disability Symptom Complex (MADS): One-leg Standing, TUG Times and Walking Ability). 理学療法科学. 2011;26(5):619-623. DOI: 10.1589/rika.26.619
Seino S, Shinkai S, Fujiwara Y, Obuchi S, Yoshida H, Hirano H, Kim HK, Ishizaki T, Takahashi R; TMIG-LISA Research Group. Reference values and age and sex differences in physical performance measures for community-dwelling older Japanese: a pooled analysis of six cohort studies. PLoS One. 2014;9(6):e99487. DOI: 10.1371/journal.pone.0099487 PMID: 24923425 PMCID: PMC4055685
Saunders S, Speechley M, Griffith LE, Kuspinar A, Sibley KM, Raina P, D'amore C, Richardson J, Noble T, Beauchamp MK. Prospective evaluation of balance and mobility tests as part of the World Falls Guidelines algorithm. Age and Ageing. 2026;55(2):afag028. DOI: 10.1093/ageing/afag028 PMID: 41697879 ※全文は無料公開されていません。本記事の引用は抄録の範囲です。
※本記事は運営者が読み、自身の言葉で要約したものです。
この記事について
本記事は公開されている論文をもとに、あいす・理学療法士(10年目)が要約・解説したものです。原著の内容を完全に再現するものではないため、 臨床判断の際は必ず原著をご確認ください。
また、本記事は特定の個人に対する診断・治療の助言ではありません。 症状についてのご相談は主治医・かかりつけの専門職へお願いします。